【独自調査レポート】都道府県公式サイトにおけるアクセス解析・ヒートマップツールの実装状況調査(2026年8月)

【調査結果サマリー】

  • Google Analytics導入率: 43自治体(91.49%)でGoogle Analyticsの実装を確認。依然として高い依存度がうかがえる。
  • 他解析ツールの動向: 国産アクセス解析ツール「Sibulla」を2自治体、「User Insight」を1自治体で確認。セルフホスト型「Matomo(タグ型)」の実装は0件。
  • ヒートマップ活用: 8自治体(17.02%)で導入されており、うち5自治体(10.64%)が無料ツール「Microsoft Clarity」、3自治体が有償ツール「MIERUCA HEATMAP」を活用。
  • 現場の課題: 中央省庁で進むデータ自律管理の潮流に対し、地方自治体との環境ギャップが顕在化。また、サイト内における旧型タグの放置や管理の形骸化も散見された。

※本レポートにおける「自治体」は、47都道府県を指します。

 1. はじめに:官公庁で進む「データ主権の確立」と、地方自治体の現在地

近年、デジタル庁をはじめとする中央省庁では、アクセス解析ツールの見直しが急速に進んでいます。背景にあるのは、データ主権の確保や海外プラットフォームへのデータ二次利用リスク、GDPR(EU一般データ保護規則)に代表されるプライバシー保護の国際的な潮流です。この流れに伴って、データを自組織で完結して管理できるセルフホスト型アクセス解析ツール「Matomo」等への移行や国産アクセス解析ツールの活用が増えています。
一方で、住民の生活に最も身近な存在である「地方自治体(47都道府県)」のWebサイトにおいては、こうしたデータガバナンスの意識やツールの見直しがどの程度進んでいるのでしょうか。
本レポートでは、国レベルで生じている変化と地方自治体の現在地との「ギャップ」を明らかにするため、全国47都道府県の公式サイトを対象に、独自調査の結果を報告します。

2. 調査概要と検証手法

  • 調査時期: 2026年8月20日
  • 調査対象: 全国47都道府県の公式Webサイト(トップページ)
  • 調査方法: ブラウザのデベロッパーツール等を用い、JavaScript通信ログからタグ型アクセス解析ツールの利用状況を目視検証。

本調査に関するおことわり

本調査は、公開情報をもとに当社が独自に調査・集計したものであり、各自治体へのヒアリングによるものではありません。
また、本手法はブラウザ上で通信が発生する「タグ型」を対象としています。サーバー側でログを処理する「ログ型」ツールについては外部通信が発生しないため検知できず、本調査では「未検知(ログ型利用または解析非実施)」として分類しております。

3. 【調査結果】全国47自治体におけるツール導入実態

全国47自治体の公式サイトにおけるアクセス解析ツールおよびヒートマップツールの導入状況を集計した結果、特定のツールへの高い集中と併用傾向が浮き彫りとなりました。

アクセス解析ツールの導入率

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ヒートマップツールの導入率

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アクセス解析ツールとヒートマップツールの併用率

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 Google Analyticsへの圧倒的依存(91.49%)

調査対象の9割を超える43自治体サイトでGoogle Analytics(GA)の実装が確認されました。民間企業同様、各自治体においても「無料で高機能」「操作マニュアルやノウハウが広く普及している」という実用上の観点から、標準ツールとして深く定着している実態がうかがえます。

国産の解析ツールとログ型解析の利用状況

GAを利用していない4つの自治体のうち、2つの自治体では国産の有償アクセス解析ツール「Sibulla」、1つの自治体で「User Insight」が実装されていました。残り1つの自治体についてはWebサイト上でタグが検出されず、サーバーサイドでのログ型解析を実施しているか、もしくはアクセス解析自体を行っていない可能性が考えられます。
なお、今回の調査では中央省庁で導入が進む「Matomo」のタグ型実装は都道府県レベルで0件という結果になりました。ただし、Matomoには本調査の検知対象外となる「ログ型」の解析手法も用意されているため、タグ未検知の自治体においてログ型として運用されている可能性も考慮する必要があります。

 ヒートマップツールによる「UX改善」への取り組み(17.02%)

PV数や訪問者数といったアクセス総量だけでなく、ページのどこが読まれているかを可視化する「ヒートマップツール」を導入しているのは8つの自治体(17.02%)でした。そのうち5つの自治体(10.64%)は無償で利用できる「Microsoft Clarity」を導入しており、コストを抑えつつ住民視点でのUX(使いやすさ)改善を模索する動きが見られます。
なお、国産の有償ツール「MIERUCA HEATMAP」の導入も3つの自治体で確認できました。

4. 【調査結果の考察】官公庁とのギャップと「タグ管理不備」の現状

今回の調査データと実際のサイト検証から、地方自治体Webサイトにおける「データ管理」に関して2つの大きな課題が浮き彫りとなりました。

課題1:官公庁(国)と地方自治体との意識・環境のギャップ

主要省庁34サイトを対象とした当社の調査結果では、11.76%(デジタル庁、厚生労働省、こども家庭庁、国税庁)で既にMatomoのタグ実装が確認されています。
全体に対する割合としてはまだ発展途上であるものの、デジタル推進を主導するデジタル庁や、高度な個人情報・厳格なデータ管理が求められる厚生労働省・国税庁などの主要機関で先行採用されている点は特筆すべき実績です。データ所有権の確保やセキュリティ要件を満たすWeb解析ツールとして、公的機関を中心に採用が着実に進んでいることが伺えます。
一方、都道府県レベルでは依然として9割以上がGoogle Analyticsに依存しており、データガバナンスやデータ主権に関する検討が自治体現場まで十分に浸透していないギャップが明らかな数値として現れました。

課題2:散見される「タグ管理」の不備と形骸化

ツールの選定以上に、現場の運用体制において検討の余地があるのがタグの管理状況です。具体的には以下の状況が散見されます。

    • 旧来のGAタグが残存しており、GA4の全機能を活用しきれていない可能性があること
    • 新旧のGAタグが同一サイト内に混在しており、タグ運用の適正化がなされていないこと
    • Google Tag Manager(GTM)においても、IDの異なる複数コンテナの設置により管理が複雑化していること

これらは単なる管理上の非効率にとどまらず、プライバシーポリシーに記載のないデータ収集が行われるというコンプライアンス上のリスクを内包しています。

度重なるサイトリニューアルやツール導入の過程で、過去のレガシーなタグや設定が整理されずに蓄積されているケースが見受けられました。

5. 今後のWeb運用における『データガバナンス』と『UX改善』

本調査によって明らかになった現状を踏まえ、今後の自治体Webサイト運用における実効性の高いアプローチとして、以下の改善指針を提言いたします。

データガバナンスの基盤となる「タグ運用の適正化」と管理体制の再構築

データガバナンスを整えるための第一歩として、現行サイトにおけるGoogle Tag Manager(GTM)の管理主体や、実装されている各種マーケティングツールの稼働状況を正確に把握することが重要です。役割を終えた旧世代タグの棚卸しや、GTMにおける配信ルールの最適化を実施します。特に、複数GTMコンテナの混在や不要なスクリプトの整理は、セキュリティ・コンプライアンス上のリスクを抑えるだけでなく、ページ表示速度の向上といったUXの側面からも実効性の極めて高い施策となります。

「住民視点のUX改善」への転換

アクセス数だけでなく、「住民が目的の情報に辿り着けているか」というUXの観点が重要です。ヒートマップツールや、後述するサイト内検索分析を活用し、住民の行動実態に基づいたコンテンツ最適化が求められます。

アクセス数等の定量分析に加えて定性的な分析と組み合わせることで、より実効性の高いUX改善サイクルを回すことが可能となります。

 「サイト内検索キーワード」の分析による住民ニーズの把握

Webサイトの改善施策として『サイト内検索キーワードの分析』も重要です。検索窓に入力されるキーワードには、ユーザーが『サイト内で探しているのに見つけられていない情報』という具体的な課題が隠されています。これらを分析して、コンテンツの内容や導線などを改善していくことは、住民にとっての利便性を高めるための極めて有効な手段です。

詳細な活用方法については、以前公開したサイト内検索分析に関するコラムもぜひご参考ください。

データガバナンスに基づいたツール選定とポリシーの整合

GA等の無料のクラウド型ツールの活用は極めて利便性が高い一方で、実際の運用状態と利用規約や方針との間に生じるギャップは、無視できない重大なリスクにつながります。とりわけ、外部へ公表しているプライバシーポリシー等の方針と、Webサイト上で実際に稼働しているマーケティングタグ等の挙動が一致していない場合は、組織のガバナンスを揺るがす深刻な課題といえます。
各自治体公式サイトが住民からの信頼を永続的に確保していくためには、組織が策定したガバナンス方針に基づき、収集データが厳格かつ適正に管理・運用されているかを常に精査する姿勢が、今後ますます重要性を増していくと考えられます。

6. まとめ:安全で効果的なWebデータ活用を目指して

今回の調査では、全国47都道府県の公式サイトにおけるアクセス解析・ヒートマップツールの導入実態を明らかにしました。調査対象の9割以上がGAを実装する一方で、適切なタグ管理やデータガバナンスの整備に課題を抱える現状が見えてきました。

自治体DXの加速とともに、今後は「利便性」だけでなく、「データ主権」や「安全な管理体制」を両立させる視点が不可欠です。中央省庁での導入事例が示すように、今後はデータガバナンスを念頭に置いたツール選定や運用見直しが、地方自治体においても重要な検討事項となっていくでしょう。
今後も同様の自治体サイト調査を定期的に実施し、Web運用の参考となる情報をコラムを通じて継続的に発信してまいります。

なお、当社では本記事でも紹介した『Matomo』を用いたアクセス解析・運用支援サービス「サポートサービス for Matomo」をご提供しております。

組織のセキュリティ要件によりGAの利用が難しい場合や、Matomo導入後の運用・トラブル対応にお困りの際は、ぜひ当社までご相談ください。
長年の解析知見を活かし、貴自治体のDX推進を強力にサポートいたします。データガバナンスやツール選定に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。