GA4よりもカンタン!Matomoの「サイト内検索」レポートで利用者の"困りごと"を一瞬で見抜く方法
Webサイトのアクセス解析レポートを確認する際、まずはじめにどのような指標をチェックされているでしょうか。
「先月と比べてPV数に大きな変化はないから、今月も概ね順調だ」
「トップページからの流入が依然として一番多い。主要な告知はここを中心に掲載しよう」
日々の運用業務の中で、こうしたサイト全体の動向を大まかに把握するルーティンに終始してはいないでしょうか。
アクセス解析ツールの中でもMatomoの導入率が特に高いと言われる官公庁や教育機関、金融機関といった公共性の高いWebサイト運営において、「ユーザーが必要とする情報を正確・迅速に届けること」は最優先の使命です。しかし、平均的な数値だけでは、ユーザーがどこで立ち止まり、どの情報に辿り着けずにいるのかという「本質的な課題」は見えてきません。実は、利用者が直面している真の「困りごと」は、サイト内の検索窓に入力された「検索キーワード」という生の声にこそ、最も色濃く反映されているのです。
「サイト内検索の分析は専門的でハードルが高そう......」と懸念される必要は全くありません。本記事では、信頼性と正確性が求められるサイト運用に向き合う皆様へ向けて、Google Analytics(以下GA4)との違いを交えながら、Matomoで利用者の「本音」を掴み、ユーザビリティを劇的に向上させるための実践的な活用術を解説します。
1. なぜ「サイト内検索」のデータが、現代のサイト運用において最強の武器になるのか
「サイト内検索の計測」自体は、Matomoオリジナルの特殊な機能ではありません。
GA4をはじめ、世の中の多くのアクセス解析ツールに搭載されている、いわばWeb解析の基本機能です。 しかし、この基本機能こそが、現代のサイト運用において最も価値のある「最強の武器」になり得ます。というのも、検索エンジン(GoogleやYahoo!など)からの流入キーワードがプライバシー保護の関係でほぼ見えなくなった現代において、自社サイト内の検索窓こそが、ユーザーが入力した「生の言葉」を100%把握できる唯一の場所だからです。 特に官公庁や大学、金融機関のサイトを訪れるユーザーは、エンタメサイトのように「なんとなく暇つぶしで回遊する」ということはまずありません。
- 住民票の郵送手続きに必要な書類をダウンロードしたい(自治体)
- 後期の履修登録の締め切りや奨学金の申請手順を知りたい(大学)
- 特定の投資信託の解約ルールや手数料について確認したい(金融)
このように、明確な目的と強いモチベーションを持ってサイトを訪れます。そして、サイトのメニュー(ナビゲーション)から目的のページが見つけられなかったとき、最終手段として利用するのがサイト内の「検索窓」です。
つまり、検索窓に打ち込まれたキーワードは、ユーザーが自ら入力した「今、自分が一番探しているのに見つからなくて困っている情報」そのものなのです。
なぜMatomoは「即分析」できるのか?GA4とレポートとの決定的な違い
「それなら、GA4でも同じように分析できるのでは」と思われるかもしれません。確かにサイト内検索のデータ計測自体は、GA4でも可能です。
GA4で分析を行う場合、標準メニューにはないため(2026年7月現在)、最初は「探索レポート」を活用して作成する必要があります。もちろん、一度ひな型(レポートファイル)を作成・保存してしまえば、継続的な定点観測環境として十分に機能します。ただし、そのひな型を構築する段階において、指標やディメンションの概念を熟知した専門的な知見が求められます。「どの数字をどう組み合わせれば目的の答えに辿り着けるか」というロジックを習得するための学習コストは決して低くありません。
高機能なGA4でゼロから分析環境を構築・維持しようとすると、その学習コストが大きな壁となり、サイト内検索の分析そのものが「難しい、自分たちには手に負えない」と感じられてしまうケースも少なくありません。
一方、Matomoは「行動 > サイト内検索」という専用レポートが標準装備されています。高度な設定を行わずとも、導入したその日から分析を開始できる点は実務上の大きな強みと言えます。
![]()
参考:Matomo公式デモサイトの画面
どちらのツールを使った場合も、キーワードを毎日のように定点観測して見る必要はありません。「数か月から半年に一度」といったペースで一定期間のデータを点検し、着実なサイト改修へつなげる運用サイクルを維持することが重要です。特にランキングの上位のキーワードは、多くの利用者が求めているニーズの表れと言えます。定期的なチェックを習慣化し、優先順位をつけて対策を積み重ねていくことが、サイト品質の向上には不可欠です。
2. Matomoでサイト内検索データを有効化する手順
「サイト内検索の計測には、エンジニアによる複雑なプログラム改修が必要なのでは?」と思われるかもしれませんが、Matomoなら管理画面から数分で設定完了します。
手順は以下の通りです。
- 自社サイトの検索仕様を確認する
自社が管理するサイト上で適当なキーワード(例:「申請」)で検索をかけてみてください。その時のブラウザのURLを確認します。 例えば、検索した結果のURLが下記だったとします。
https://example.go.jp/search?q=申請
https://example.go.jp/search?keyword=申請
この q や keyword の部分を「クエリパラメーター名」と呼びます。
- 自社サイトの検索仕様を確認する
Matomoの「設定」(歯車マーク)から「ウェブサイト」メニューを展開後「設定」を選択し、全般的なウェブサイト設定の項目を表示します。
![]()
参考:Matomoの管理画面
ページをスクロールすると「サイト内検索のトラッキング」という項目がありますので、クエリパラメーター項目に先ほど確認したパラメーター(q や keyword など)を入力して保存するだけです。
なおデフォルトでは
がOR条件でセットされていますので、サイト側の仕様とマッチしていれば変更する必要はありません。
![]()
参考:Matomoの管理画面
たったこれだけの操作で、自動的にユーザーが使用したサイト内検索キーワードがレポート画面に表示できるようになります。
3. 【実践】検索キーワードから読み解く、サイト改善のためのアプローチ
データが蓄積されて設定が完了した後は、いよいよ実践的な分析のフェーズへと移ります。
Web担当者の方が「ユーザビリティの改善」や「重要な案内の漏れを防ぐ」ために、Matomoの「行動 > サイト内検索」レポートで必ず確認すべき要点を、具体的な活用シーンを交えて詳しく解説していきます。
手法1:「検索後の検索終了率(離脱率)」が高いキーワードの救済
Matomoのサイト内検索レポートには、各キーワードごとに「検索終了率」という指標が表示されます。これは、「そのキーワードで検索したものの、表示された検索結果に満足できず、あるいは目的のページが見つからなくて、そのままサイトを去ってしまった割合」を示しています。言い換えると、この指標は機会損失につながっているキーワードの割合とも言えます
【自治体・公共サイトにおける改善のヒント】
例えば、サイト内検索で「マイナンバーカード 郵送」といったキーワードの離脱率が高い場合、利用者は「郵送での手続き」を求めているにもかかわらず、情報が見つけられずに離脱している可能性があります。このような場合は、情報がPDF等の古い資料に埋もれていないかを見直し、「郵送申請に関する特設ページ」を新設するなどの対策が有効です。サイト内検索で正しく情報をヒットさせることで、利用者の不満解消に加え、役所の窓口や電話対応の負担軽減といった効果も期待できます。
手法2:「組織の専門用語」と「利用者の日常語」のズレの解消(表記ゆれの発見)
公共性の高いサイトでよく起こるのが、「情報を提供する側(組織)の言葉」と、「情報を探す側(利用者)の言葉」がすれ違っている現象です。サイト内検索レポートは、利用者が普段どんな言葉遣い(単語)で情報を探しているかを教えてくれます。
【教育機関サイトにおける改善のヒント】
例えば大学の公式サイトにおいて、「履修計画書の提出」や「休学手続き規則」といった正式な名称で案内されるケースは多く見られます。しかし、これらは学生が検索時に用いる「授業登録」や「学校 休む」といった日常的な表現と乖離している場合があるため、正式名称を記載したページに学生が普段使う言葉をタグや説明文として補う工夫を取り入れることが効果的です。これにより、利用者がストレスなく目的に辿り着けるようになり、事務部門における問い合わせ対応の負担軽減にも繋がります。
提供者側の専門用語に固執せず、利用者の目線に合わせた言葉の調整を行うことが、サイトの操作性を向上させるための極めて重要なポイントとなります。
組織の中にいると、どうしても「正式な専門用語」だけでサイトを構築してしまいがちですが、検索窓のキーワードを確認することで、利用者の目線に合わせたサイト表現の微調整が可能になります。
4. データを正しく実務に活かすための3つのポイント
実務においてデータの解釈に迷ったり、誤った改善施策を行ったりしないために、押さえておくべき3つの鉄則をご紹介します。
鉄則1:「検索結果ゼロ(ノーヒット)」のキーワードを最優先で対策する
Matomoのサイト検索レポートには、キーワード一覧だけでなく、「検索結果が0件だったキーワード」を個別に集計してくれるレポート機能があります。ユーザーが言葉を入力したにもかかわらず「一致する情報はありませんでした」と画面に表示されたケースです。
![]()
参考:Matomo公式デモサイトの画面
これらのキーワードは、サイト運用において優先して確認すべき課題ですが、抽出されたすべてのキーワードを完璧に対策する必要もありません。というのも、こういったキーワードの上位には単純な誤字や、サイトの目的とは無関係なワードも含まれるケースも少なくありません。まずは検索回数や、多くの利用者が求めている情報かどうかを見極め、優先順位をつけて対策する「取捨選択」こそが、現実的な運用を続けるコツです。
もし、情報そのものがサイト内にない場合は早急にページやQ&Aを作成し、情報はあるのにヒットしていない場合は使用している検索エンジンの設定で類義語がヒットできるような調整を行うなどして、利用者を迷わせない仕組みを作りましょう。
鉄則2:検索ボリュームだけでなく「検索終了率の高さ」に注目する
つい検索回数が多いランキング上位のキーワードばかりに目が向きがちですが、本当に困っている人を見つけるためには、検索回数は少なくても「離脱率が異常に高いキーワード」に注目する必要があります。
たとえ月間の検索数が30回程度と少なくても、離脱率が90%を超えるようなキーワードには、利用者が確実に直面しているボトルネックが存在します。検索数の多さだけに惑わされず、こうした割合の異常値を見逃さないことが重要です。
鉄則3:定期的なノイズ排除(職員や身内のアクセス)を意識する
官公庁や教育機関、金融機関のサイトでは、一般の利用者だけでなく内部の職員やカスタマーサポートの担当者が、業務中に申請書のURLなどを確認するためにサイト内の検索窓を利用しているケースが多々あります。
身内のアクセスが大量に混ざってしまうと、一般のユーザーが本当に困っているデータが薄まってしまいます。Matomoにもあるような「IPアドレス除外設定」などを使って、組織内からのアクセスを事前に計測対象外にしておくか、あるいはセグメント機能を使って内部アクセスを除外したレポートを見るように徹底しましょう。正しい意思決定は、正しいデータ環境から生まれます。
5. 検索キーワードを「本質的なニーズ」として捉え直す
ここまで、具体的な分析の鉄則やアプローチをお伝えしてきました。最後に、データを読み解く上での解釈方法についてお話しします。
検索キーワードは、表記ゆれやスペースの有無によって、システム上では細分化されがちです。例えば「マイナンバー 郵送」と「マイナンバー 郵送」を別々のデータとして扱っていては、そのキーワードが持つ本来の検索需要を見誤ります。分析においては、同じ意味を持つ言葉をグループとしてまとめ、利用者が何に悩み、何を求めているのかという「ニーズの塊(トピック)」を浮かび上がらせる作業が不可欠です。
表面的な単語の羅列を一つずつ追うのではなく、データの裏側にある利用者の意図を読み解く視点こそが、サイトのユーザビリティを向上させる鍵となります。バラバラなキーワードを「本質的な需要」として統合して捉えることで、私たちは初めて、どのトピックから優先的に改善すべきかを明確に判断できるのです。
まとめ:検索キーワードは、利用者からサイトに向けられた「メッセージ」です
サイト内検索のキーワードは、単なるテキストデータの集まりではありません。それは、あなたのサイトを訪れたユーザーが、画面の向こう側から「ここを教えて」「これがなくて困っています」と差し出してくれた、ダイレクトなメッセージと言えます。
どのような業界であっても、Webサイトにおいて最も重要なのは「利用者に必要な情報をストレスなく届けること」です。一般的な機能であるサイト内検索だからこそ、実際の運用に適したツールを選び、ユーザーの「メッセージ」を確実にチェックする体制を構築できるかが、サイトのユーザビリティを高める決定的な差となります。
弊社の「サポートサービス for Matomo」は、サーバーの安定運用やセキュリティ対策といったインフラ面の確かな保守にとどまらず、蓄積されたアクセス解析データを活用してサイトのユーザビリティ向上や業務効率化など、具体的な成果に結びつけるための伴走型支援を提供しています。
次回もまた、サイト運用をスマートに変えるためのMatomoの活用ヒントをお届けします。利用者の声に真摯に向き合い、共に理想的なWeb体験の構築を目指していきましょう。