成果を出すマーケターはこう使う。Matomoのセグメント掛け合わせ術と、次の施策に繋げる「3つの鉄則」
Webマーケターの皆様は、日々の業務の中でMatomoのレポートをどのように活用されていますか?
「今月は5万PV、前月比で微増」「CVRは1%前後で安定している」といったように、サイト全体の数値を総量として捉え、なんとなく現状を把握しただけで画面を閉じてはいないでしょうか。もし少しでも心当たりがあるならば、注意が必要です。
レポート画面に表示される数字は、あくまで集計期間中におけるサイト全体の合計値や平均値に過ぎません。全体の数値のみを追うだけでは、本質的な課題や次に打つべき施策は見えてこないのです。例えるなら、クラスの平均点だけを見て「みんなそこそこ理解している」と判断してしまう先生と同じです。平均が60点でも、実際には満点の子もいれば0点の子も混ざっているかもしれません。個々の生徒(ユーザー)の状況を細かく見なければ、具体的な指導方針が立てられないのと同様に、アクセス解析も「全体」を見るだけでは真の課題解決にはなかなか繋がらないと言えます。
これまで多くのWebサイト改善に携わってきた経験から言えるのは、「データは、意味のあるグループに分けることで、初めて価値を持つ」ということです。
本コラムでは、マーケターの皆様に向けてMatomoのセグメント機能を活用し、データを「成果を生み出す資産」に変える手法について解説いたします。
1. そもそもMatomoの「セグメント機能」とは?
「セグメント」という言葉には少し難しそうなイメージがあるかもしれませんが、その意味はいたってシンプルです。サイトに訪れた全ユーザーという「ごちゃまぜの集団」の中から、「特定の条件を持った人たちだけをバケツにすくい取る機能」だと考えてみてください。
例えば、サイトに月に1万人の訪問者がいるとします。この1万人は、以下のように全く異なる背景を持ったユーザーが混ざり合っている状態です。
- パソコンの大画面で就業時間中にじっくり事例記事を読んでいる、施策を検討中のBtoB担当者
- 通勤電車のなかで、スマホでサクッと最新のコラム記事を読みに来た情報収集層
- すでに自社のサービスを契約していて、ログインボタンを探しに来た既存の顧客
- 広告をクリックして、強い興味を持って初めてサイトを訪れた見込み客
これらを全部一緒にした「平均値」のデータを見て、「滞在時間は平均2分です」と言われても、具体的な改善アクションには繋がりません。PCの人は5分見ているかもしれませんし、スマホの人は30秒で閉じているかもしれないからです。
セグメント機能を使えば、「スマホから来た人だけ」「初めてサイトに来た人だけ」という条件を指定して、レポートの表示を対象ユーザーだけの数値に瞬時に切り替えることができます。データを意味のあるグループで切り分けるからこそ、それぞれのユーザーの「本当の姿」が浮き彫りになるのです。
2. 活用を広げるセグメントのバリエーション
Matomoには、驚くほど豊富なセグメントの条件(切り口)が標準で用意されています。マーケティングの現場で特によく使われる代表的な切り口を整理しましたので、「自社ならどれが使えるか?」と想像しながら読み進めてみてください。
「どこから来たか」の切り口(チャネル・集客)
- 検索エンジン: GoogleやYahoo!などの自然検索から来たビジット(訪問:セッション)
- ソーシャル(SNS): X(旧Twitter)、Facebook、Instagramなどから来たビジット
- キャンペーン: リスティング広告やディスプレイ広告、メルマガのリンクなど、意図的に仕掛けた施策から来たビジット
- 外部サイト: 特定の外部ブログや、紹介されたニュースサイトのリンクから来たビジット
「どんな人か」の切り口(ユーザー環境)
- デバイスタイプ: スマートフォン、パソコン、タブレット
- ビジットタイプ: 「初めてサイトを訪れた人(新規)」か、「過去にも来たことがある人(リピーター)」か
- ビジターの場所: 訪問者がアクセスしている国や都市名
- 閲覧環境: 使用しているブラウザ(Chrome、Safariなど)やOS名など
「サイト内で何をしたか」の切り口(行動)
- 閲覧ページ: 「料金表ページ」や「事例紹介ページ」など、特定の重要ページを見たビジット
- サイト内検索: サイトの中に設置された検索窓に、特定のキーワード(例:「料金」「導入手順」など)を入力して検索したビジット
- アクションタイプ: 「PDFをダウンロードした」「イベント申し込みのための外部リンクフォームをクリックした」などの具体的なアクションを起こしたビジット
「成果を出したか」の切り口(コンバージョン)
- 目標:設定済みの「目標(問い合わせ完了など)」を達成したビジット
これらのパーツを自由に「掛け合わせる」ことで、マーケターが喉から手が出るほど欲しい「有効なマーケティングデータ」が手に入るようになります。
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参考:セグメントメニューの一例
3. マーケティング成果を最大化する!鉄板のセグメント掛け合わせ術
本セクションでは、コンサルティングの現場で利用頻度が高い、課題の発見から具体的な施策検討までを円滑に進めるための「鉄板のセグメント掛け合わせパターン」を解説します。特定の事例に依存せず、データの論理構成に基づいた分析を行うことで、どのようなサイトでも再現性の高い成果を得ることが可能です。
【流入チャネル】×【デバイス】×【目標未達成】でボトルネックを特定する
広告やSNS運用など、流入を増やしているにもかかわらずCVが伸び悩む場合、原因が「集客ターゲット」にあるのか「サイトの受け皿(UI)」にあるのかを切り分ける必要があります。
この掛け合わせ分析は、特に「意欲を持って流入したにもかかわらず、離脱してしまった層」を特定するのに有効です。特定のデバイス環境でレイアウトが崩れていたり、動線が機能していなかったりといった「技術的な課題」がボトルネックとなっているケースをあぶり出すことができます。単に広告による集客を強化するのではなく、サイト自体の表示品質や導線設計の見直しといった「サイトの足回り改善」に注力すべきかを判断するための、重要な根拠となります。
【訪問回数】×【特定コンテンツ】×【目標達成】で「決定打」を特定する
コンバージョンに至ったユーザーが「最終的に何を読んで決断したのか」を特定することは、コンテンツ戦略において最も重要な工程の一つです。
「過去に複数回サイトを訪れ、CVに至ったユーザー」という特定の層に絞って分析を行うことで、全体のPV数だけを追っていては決して見えてこない、「ユーザーが最終的に決断を下すきっかけとなったコンテンツ(CVフック)」を明確に特定できるようになります。
たとえPV数が少ない記事であっても、それが高いCV貢献度を誇っているのであれば、そのコンテンツこそがサイトのキラーコンテンツと言えます。
そのコンテンツへの導線をトップページに配置したり、メルマガで積極的に紹介したりすることで、既存のコンテンツを活かしたままCVRの向上が期待できます。
【サイト内検索利用】×【目標未達成】で潜在ニーズを発掘する
サイト内検索機能を利用するユーザーは、自らの言葉で目的を言語化しているため、その検索キーワードを分析することは、ユーザーの本質的なニーズ(潜在ニーズ)を発掘する上で非常に有効です。
サイト内検索後に目標未達成で離脱している層を抽出することは、すなわち「ユーザーが求めている情報がサイト内に存在しない(あるいは見つけにくい)」というギャップを可視化することに他なりません。入力されたキーワードの履歴を確認することで、新規コンテンツ作成のヒントや、優先的に制作すべきページ、あるいは改善すべきナビゲーションを明らかにします。ユーザーが「欲しい」と言っている情報を先回りして提供することで、機会損失を最小化する攻めの施策が可能となります。
4. 実務で失敗しないための「3つの鉄則」
初めてセグメントを作成する際、若手マーケターが陥りやすい「典型的な落とし穴」が存在します。誤ったデータに基づいて判断を下し施策が迷走してしまうことを防ぐため、3つの鉄則を整理しました。
【鉄則1】論理条件「AND」と「OR」を厳密に使い分ける
まず前提として、複数の条件を組み合わせて作ったものも、それ自体が一つの「セグメント」として扱われます。複数の条件を組み合わせる際は、その目的に応じて論理演算を使い分ける必要があります。「AND(かつ)」は条件を重ねてターゲットを絞り込み、分析の精度を高めるために使用します。一方で「OR(または)」は、共通点を持つ複数の属性を統合し、母数を広げて全体像を把握するために用います。現在の分析が「絞り込み」なのか「合算」なのか、常に意図を明確にすることが肝要です。
【鉄則2】統計的に有意な「分母(データ量)」を確保する
条件を細かく設定しすぎると、該当するユーザー数が極端に少なくなってしまいます。分母が小さすぎるデータは、統計としての信頼性を欠き、単なる「個人の偶発的な行動」を追っているに過ぎない状態に陥ります。改善施策の客観的な判断材料とするためには、統計的有意差を検出するために必要なサンプルサイズ(目安として数千セッション、あるいは数十~から数百のコンバージョン数など)が確保されているか、事前に確認する習慣をつけましょう。
【鉄則3】「自分自身のアクセス」で設定の正誤を検証する
作成したセグメントが設計通りに機能しているか、必ず事後検証を行いましょう。自分自身でサイトへアクセスし、その挙動がビジットログなどで正しく抽出されているかを確認します。この地道なプロセスが、誤ったデータ報告に基づく施策ミスを未然に防ぐための、最も確実な防壁となります。
まとめ:「感情や行動理解」のアクセス解析を
アクセス解析で得られる数値は、そのままでは単なる無機質な統計に過ぎません。しかし、セグメント機能を活用して多角的に切り分けていくことで、数字の向こう側にいる一人のユーザーの動きが、鮮明に浮かび上がってきます。
私たちの「サポートサービス for Matomo」が提供する価値は、単なるインフラの維持管理という枠組みに収まるものではありません。
蓄積された膨大なデータを「成果」という確かな価値へ昇華させるため、皆様のチームに深く寄り添うパートナーとして、一歩先を見据えたデータ活用をトータルで強力にバックアップいたします。
これからも皆様のサイト成長に寄与する活用のヒントをお届けしてまいります。共に成果を目指して取り組んでいきましょう。