Open source software 株式会社QUICK様 導入事例

OSS - サイオスOSSよろず相談室

金融情報のシステムを商用ソフトウェアからOSSに移行しつつ「OSSよろず相談室」のサポートの支援でサービス品質を維持

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金融情報を取得して配信するまでのシステムをOSSベースに移行

株式会社QUICKは、日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社だ。世界の証券・金融情報や、政治・経済情報をリアルタイムで配信している。「日経平均株価」をはじめとする指数の算出や、新聞などのマスコミへのデータ提供などで、QUICK に触れることもあるだろう。そのほか、資産運用支援や、注文執行業務の支援など、証券・金融市場に関連する総合的なソリューションを提供している。

そのためのシステム群としては、証券取引所などの情報元から情報を受け取るシステムや、それを蓄積するデータベース、データを加工するシステム、インターネットや専用線などで顧客に市況データを配信するフロントエンドのシステムなど、さまざまなシステムが組み合わさっている。

QUICKではこれらのシステムの基盤として、OSとしてはWindowsの他に商用のLinuxやUNIXなどを、ミドルウェアでも有償サポートありの製品を使っていた。それに対して、コスト削減や、世の中でOSSが広がり、新しい技術が生まれていることなどから、CentOSや各種OSSも積極的に活用していこうという機運が社内で徐々に高まってきた。

ただし、顧客は品質の高い証券・金融情報が安定して提供されることを求めているので、QUICKのシステムには高い信頼性が求められる。そのため、一気にOSSに舵を切った場合に、システムを安全に継続して運用していく上で、それまであったサポート窓口が一切なくなることが高いハードルとなっていた。

この課題に対してCentOSや各種OSSのサポート窓口となるサービスを調査した中で、サイオステクノロジー(以下、サイオス)の「OSSよろず相談室」を知り、2011年に導入した。当時、類似サービスはほとんどなく、WebでOSSよろず相談室を知ってサイオスに問い合わせを行った。導入の検討を進めていったところ、感触がよかったため、そのまま採用に至った。

独自開発システムの構成を再検討しOSSミドルウェアで実現

OSSよろず相談室との契約や窓口業務は、ITインフラ本部 クラウド推進グループが担っている。そして、各システムを開発するそれぞれの部署ごとに担当者を割り当てて、サブ担当としている。社内からの問い合わせは、これらの担当者を経由してサイオスに問い合わせしている。

ITインフラ本部 クラウド推進グループは、社内のITの基盤部門の役割であり、オンプレミスやクラウドの各システムが稼働する足回り部分の設計・構築・運用を担当している。

「CentOSに関しては、それまでに使っていたRed Hat Enterprise Linuxのクローンなので、困ったときに聞ける窓口があればどうにかなるだろうという見通しはありました」と、ITインフラ本部 クラウド推進グループ 副部長 矢内 隼人氏は語る。

株式会社QUICK
ITインフラ本部 クラウド推進グループ 副部長 矢内 隼人氏
株式会社QUICK
ITインフラ本部 クラウド推進グループ 副部長 矢内 隼人氏

一方、基盤の上のミドルウェアやアプリケーションについては少し事情が異なる。顧客に市況データを配信するフロントエンドのWebサーバ などを除き、QUICKのシステムは同社ならではの特殊なものとなるため、ほぼ独自開発のシステムとなっていた。これを、OSSのミドルウェアを使って、更改時期などに合わせて順次作り替えていった。

たとえば、これまでの設計思想では、証券取引所などからデータを受信するシステムから、そのデータを処理して配信するシステムまで、直結した構成になっていた。これを疎結合化するため、OSSの分散データストリーミングプラットフォームであるApache Kafkaなどを採用し、データの受信・配信を仲介するデータバスのシステムを構築した。

「利用者が多かったので葛藤がありましたが、 理解を深めてもらって、いまでは利用が進んでいます」と、ITインフラ本部 インフラ開発グループ エキスパート 古田 正和氏は振り返る。

株式会社QUICK
ITインフラ本部 インフラ開発グループ エキスパート 古田 正和氏
株式会社QUICK
ITインフラ本部 インフラ開発グループ エキスパート 古田 正和氏

データベースは以前から商用のOracleデータベースを使用していたが、OSSのMySQLに移行した。それにともない、Oracleの冗長化機能に相当する部分も、OSSのPacemakerとDRBDで構築した。なお、Pacemakerはデータバスのシステムでも採用している。

このようにシステムを一つ一つOSSベースのものに更改していくことで、社内でのOSSの積極的な採用が進んでいった。

原因調査や公開情報の調査、最新情報の提供など「OSSよろず相談室」を活用

こうして導入したOSSよろず相談室について、QUICKでは「とても満足している」という。

「問題の切り分けや、原因調査、各種公開情報の調査、解決策の提案など、各観点で非常に役に立っています」と矢内氏。「また、一般にサポート窓口では、杓子定規に『それは対象外です』と言われることもあります。それに対してサイオスさんは、技術者魂というか、若干契約範囲からはみ出るような内容もベストエフォートという扱いながら柔軟に調査いただけて非常に助かっています」。

同じくクラウド推進グループに所属する窪谷 樹氏も、サイオスのサポートの回答が役に立っていると語った。「OSのバグのような挙動など不明点にあったときに、開発元の公開情報からコミュニティ情報までいろいろ調べて、これではないかという回答をいただけるので、問題を切り分けるのに役立ちますし、社内工数を削減できています。自分たちでもある程度はGoogleなどで調べられますが、自分たちではそれがどこまで信頼できる情報か、判断が難しい部分があります」。

株式会社QUICK
ITインフラ本部 クラウド推進グループ 窪谷 樹氏
株式会社QUICK
ITインフラ本部 クラウド推進グループ 窪谷 樹氏

シニアエンジニアの金田も「普通にGoogleで検索すると、信憑性の高くない情報が上位にヒットすることもあります。調査のスタートが個人ブログなどでも、そこからなるべく開発元の公開情報を探すなどして情報の確度を高めることに工数を費やし、お客様に連絡して問題ないと思ったものを回答して判断材料にしていただくようにしています」と説明する。

サイオステクノロジー株式会社
シニアエンジニア 金田 正博
サイオステクノロジー株式会社
シニアエンジニア 金田 正博

古田氏と同じくインフラ開発グループに所属する齊藤 彩香氏も、サイオスのサポートにより、データバスのシステムを期日どおりにリリースできたと語った。たとえば、サービスの冗長化を実現するため、Pacemakerのノードを一斉に起動したときにリソースが競合して起動できないという問題が発生したのだという。このときも、サイオスに相談したところ、開発元の公式ナレッジをもとにアドバイスをもらい、それをもとに一斉に起動しても負荷がだいたい均一になるように対応できた。「このように、問題の原因について、公式のバグレポートやナレッジなどを参考にしながらアドバイスをいただけるので、原因特定や対処法の検討が効率的になり助かっています」(齊藤氏)。

そのほか、CentOSの特有のエラーに遭遇したときなども、サイオスの調査をもとに会社に報告することで、説得力をもって報告できたというエピソードも齊藤氏は紹介した。

障害時のサポートのほかに、日頃から参考情報が配信されるのも便利だという。たとえば「サイオスが発信しているZabbixに関する勉強会動画の情報がメールで送られてきて参考になった」と、窪谷氏は語る。

また、「OSなど各種ソフトウェアに大きめの脆弱性があったときに、サイオスがブログで報告しているのも役立っている」と矢内氏は語る。なお、サイオス側としては、大きめの脆弱性があったときにはほぼすべての契約者から問い合わせがあるので、優先度を上げて調査している。

「われわれとしても、質の高い情報を発信できているという自負があります。ぜひ活用していただければなと思います」とシニアエンジニアの佐藤は語った。

サイオステクノロジー株式会社
シニアエンジニア 佐藤 仁
サイオステクノロジー株式会社
シニアエンジニア 佐藤 仁

サポート窓口によりOSS採用のハードルが下がり積極的な採用が進んだ

OSSよろず相談室を導入したビジネス面での効果として、まずOSのCentOSへの移行が進んだ。導入前の2010年ごろにはCentOSは社内に1台もなかったが、現在ではRed Hat Enterprise Linuxは数パーセントほどに減り、ミドルウェアのサポート要件としてRed Hat Enterprise Linuxが求められているもののためだけになっている。ちなみに、取材時にはCentOSからさらにAlmaLinuxへの切り替えも始まっているとのことだった。

ミドルウェアにおいてもOSSの採用が進み、定量的な評価はできていないが、どうしても商用ソフトウェアでないといけないというものがかなり減っている。「昔に比べて選択肢が広がったと思います」と矢内氏は言う。

品質については、まずは有償サポートのあるソフトウェアを使っていた時代からいかに落とさないかに努めた。そのため、OSSよろず相談室のサポートを活用し、いままで解決できていたことが解決できないといったことがないようにした。

一方で、OSSでは新しい技術が出てきて進化が早い。QUICKでもそうしたOSSのミドルウェアを活用することで、新しい技術に対応している。そのためにも、「今後、サポート対象のOSSを拡張してもらえるとうれしい」と古田氏は希望を述べた。

このように、OSSよろず相談室のサポート窓口があることにより、「社内でOSS採用のハードルが下がり、積極的な採用が進んだ」と矢内氏は振り返った。導入当時はほとんどなかった類似サービスも現在ではいくつかあるが、QUICKはOSSよろず相談室のサービス内容に満足しているため、今後も継続利用していきたいと語った。

営業の高本も「QUICKさんには長くご利用いただき、また利用においても非常に上手にお問い合わせをいただいています。今後もOSSをご活用いただいて、われわれがそこに寄与できればと思っております」と抱負を述べた。

サイオステクノロジー株式会社
営業 高本 浩市
サイオステクノロジー株式会社
営業 高本 浩市

株式会社QUICK

株式会社QUICK 様

<所在地>
〒103-8317
東京都中央区日本橋兜町7番1号 KABUTO ONE
https://corporate.quick.co.jp/

<設立>
1971年10月1日

<事業内容>
日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社として、世界の証券・金融情報をはじめ、政治・経済情報をリアルタイムで配信。 資産運用支援、注文執行業務の支援、情報ネットワーク構築支援サービスなど、証券・金融市場に関連する総合的なソリューションの提供。

株式会社QUICK

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