日本婦人科腫瘍学会学術講演会で「MRI画像を用いた臨床医によるAIサポート付子宮肉腫診断」の研究成果を発表

~ 「AI単独」「臨床医」「AIサポート付臨床医」による診断精度を比較 ~

2022年7月19日

東京大学 豊原佑典大学院生、曾根献文講師らとサイオステクノロジー株式会社 野田勝彦、吉田要らの研究グループは、2022年7月14日から16日に開催された第64回 日本婦人科腫瘍学会学術講演会で「MRI画像を用いた臨床医によるAIサポート付子宮肉腫診断」(演題:“Investigation of artificial intelligence for imaging diagnosis of uterine sarcomas: devices for the improvement of diagnostic accuracy for rare tumors.”)の研究成果を発表しました。


「MRI画像を用いた臨床医によるAIサポート付子宮肉腫診断」について

子宮肉腫の標準治療には子宮全摘術が必要で、子宮腫瘤病変(しきゅうしゅりゅうびょうへん)に対する術式選択として、妊孕性温存(にんようせいおんぞん)、術中播種防止(じゅっちゅうはしゅぼうし)の観点から術前の子宮筋腫との鑑別が重要です。
術前診断としてMRI(磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)が有用ですが、診断精度は確立されていません。 MRI画像を用い、子宮肉腫および子宮筋腫を正確に鑑別できれば、適切な術式を選択できると考えられます。

同研究グループは、東京大学医学部附属病院、東京都立駒込病院、公立昭和病院の共同で、術後病理学的な確定診断を得た子宮肉腫 63 例(子宮平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化子宮内膜肉腫、悪性度不明な子宮平滑筋腫瘍(STUMP)等を含む)子宮筋腫 200 例の術前 MRI 画像を収集し、T1 強調画像・T2 強調画像(脂肪抑制条件、造影条件も含む)、拡散強調画像を使用し、子宮肉腫および子宮筋腫を鑑別するための人工知能を開発し、AI単独での診断精度、放射線科医師の読影による診断精度、およびAIのサポートを受けて医師が読影した場合の診断精度の比較研究を実施しました。

今回の研究の結果、AI単独での診断精度は、最も良好なシーケンスの組み合わせで、精度(感度・特異度の平均)90.8%を達成し、熟練した放射線科専門医の読影による診断精度82.4%、放射線科修練医の精度69.4%よりも優れた精度となりました。一方、AIのサポートを受けて同じ放射線科医師が読影した場合、専門医:87.3%、修練医:90.8%と、診断精度が向上しました。特に、AIのサポートは、読影の経験値による精度のギャップを埋めることに有効であることがわかりました。

今回の研究では、MRIで取得した全画像の中から、腫瘍(子宮肉腫・子宮筋腫)部分が含まれる画像のみを専門医が抽出し、AIの学習・評価に利用しました。今後、腫瘍部分のみの画像を抽出する必要が無く、全MRI画像を入力し、子宮肉腫・子宮筋腫の診断を行うことが可能な全自動診断対応型AIの研究・開発が期待されます。

■特設ページ:第64回 日本婦人科腫瘍学会学術講演会

■発表資料:「MRI画像を用いた臨床医によるAIサポート付子宮肉腫診断」(抜粋版pdf)