日本産科婦人科学会学術講演会で「JSOG Congress Encouragement Award」を受賞
2022年8月 9日
東京大学 豊原佑典大学院生、曾根献文講師らとサイオステクノロジー株式会社 野田勝彦、吉田要らの研究グループは、2022年8月5日から7日に開催された第74回 日本産科婦人科学会学術講演会で「完全自動化に対応したMRI画像による子宮肉腫診断AIの研究成果」(演題:”A novel development of deep neural network model for diagnosis of uterine sarcomas”)を発表し、「JSOG Congress Encouragement Award」を受賞しました。
「完全自動化に対応したMRI画像による子宮肉腫診断AIの研究成果」について
子宮肉腫の標準治療には子宮全摘術が必要で、子宮腫瘤病変(しきゅうしゅりゅうびょうへん)に対する術式選択として、妊孕性温存(にんようせいおんぞん)、術中播種防止(じゅっちゅうはしゅぼうし)の観点から術前の子宮筋腫との鑑別が重要です。
術前診断としてMRI(磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)が有用ですが、診断精度は確立されていません。MRI画像を用い、子宮肉腫および子宮筋腫を正確に鑑別できれば、適切な術式を選択できると考えられます。
同研究グループは、東京大学医学部附属病院、東京都立駒込病院、公立昭和病院との共同で、術後病理学的な確定診断を得た子宮肉腫63例(子宮平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化子宮内膜肉腫、悪性度不明な子宮平滑筋腫瘍(STUMP)等を含む)子宮筋腫200例の術前MRI画像を収集し、T1強調画像・T2強調画像(脂肪抑制条件、造影条件も含む)、拡散強調画像を使用し、子宮肉腫および子宮筋腫を鑑別するためのAIを開発しました。
また、同研究グループは、2021年9月に開催された第22回 JSAWI 2021シンポジウム、2022年7月に開催された第64回 日本婦人科腫瘍学会学術講演会でも、子宮肉腫診断AIの研究成果を発表しましたが、過去の研究では、MRIで取得した全画像の中から、腫瘍(子宮肉腫・子宮筋腫)部分が含まれる画像のみを専門医が抽出し、AIの学習・評価に利用しました。しかし今回の研究では、腫瘍部分のみの画像を抽出する必要が無く、全MRI画像を入力し、子宮肉腫・子宮筋腫の診断を行うことを可能とする全自動診断対応型AIを開発しました。
今回の研究の結果、AIの学習・評価には一切使用していない未知の32症例(子宮筋腫24症例、子宮肉腫8症例)に対する診断精度は、96.9%(感度93.8%、特異度100%)を達成しました。今後、臨床医療現場での利用を目指し、社会実装されることが期待されます。
■特設ページ:第74回 日本産科婦人科学会学術講演会