日本子宮鏡研究会学術講演会で「カールストルツ賞」を受賞

─人工知能を利用した子宮鏡における子宮体癌自動診断システムの開発─

2024年3月12日

東京大学医学部附属病院 高橋優医師、曾根献文准教授らとサイオステクノロジー株式会社 野田勝彦、吉田要らの研究グループによる「子宮体癌自動診断システムの研究成果」が、2024年2月17日から18日に開催された第7回 日本子宮鏡研究会学術講演会で発表され、演題部門(演題:人工知能を利用した子宮鏡における子宮体癌自動診断システムの開発,発表者 高橋優)において「第3回 カールストルツ賞*1」を受賞しました。

「人工知能を利用した子宮鏡における子宮体癌自動診断システムの開発」について

【目的】人工知能を用いた子宮鏡における子宮体癌自動診断システムの開発を行い、子宮体癌検診の重要なデバイスとして子宮鏡検査を一般化することを目的とした。また、DNN(Deep Neural Network)を用いた人工知能を学習させるためには通常膨大な症例数が必要だが、少ない症例数でも良好な正診率が得られるアルゴリズムについて検討した。

【方法】東京大学医学部附属病院で子宮鏡を施行した全177症例(子宮筋腫 21例、子宮内膜ポリープ 60例、子宮内膜異型増殖症:AEH 15例、子宮体癌 21例、正常内膜 60例)を対象とした。「悪性群」と「良性群」の2つの分類を定義し、「悪性群」はAEHと癌、「良性群」は正常内膜、子宮筋腫、子宮内膜ポリープとした。訓練されたモデルの精度は、画像単位と症例単位のそれぞれで評価した。
画像単位での評価では、良性群については、子宮内腔の確認ができる全ての画像を評価に用いた。悪性群については、病変部位を明確に含む100枚の画像を抽出し評価に用いた。症例単位での評価では、動画で悪性群として分類された連続画像の数に基づいて判断が行われた(連続法)。さらに、3種類のネットワークモデルを組み合わせ、モデルを同時に稼働させて、どれか1つのモデルが悪性群と判定した場合その症例を悪性群と診断する方法を検証した。

【結果】 正診率は画像単位の通常の方法では80.9%、症例単位の連続法を用いた場合は89.1%であった。また複数のモデルを複合し連続法で診断した結果、癌とAEHを悪性群と分類できた確率はそれぞれ85.7%と100.0%だった。同様に、筋腫、子宮内膜ポリープ、および正常な子宮内膜を良性群に分類できた確率は、それぞれ85.7%、85.0%、および95.0%だった。全体の平均正診率は90.2%であった。

【結論】本研究の意義は少ないサンプル数で高い精度のAIを作成できたことと子宮体癌検診に用いる検査法を考案した点である。このシステムが発展し、社会実装されれば子宮体癌の検診システムに応用できると考える。

*1 カールストルツ賞
産婦⼈科⼦宮鏡⼿術領域の発展に向けた研究や、医療への貢献を主たる⽬的とした特別活動により、優れた研究成果を発表した医師を表彰し奨励する、あるいは⽀援を⾏うことを⽬的に、カールストルツ・エンドスコピー・ジャパン株式会社の協賛により創設された賞

 

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日本子宮鏡研究会

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第7回 日本子宮鏡研究会学術講演会