日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でAIの研究成果を発表

「人工知能を用いたCTにおける真珠腫乳突腔進展の自動診断」、「人工知能を用いた鼻内視鏡動画における鼻副鼻腔乳頭腫の自動診断」を発表

2022年5月30日

東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室の高橋昌寛助教、由井亮輔助教らと、サイオステクノロジー株式会社の野田勝彦、吉田要らの研究グループは、2022年5月25日から28日に開催された第123回 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 学術講演会にて「人工知能を用いたCTにおける真珠腫乳突腔進展の自動診断」および「人工知能を用いた鼻内視鏡動画における鼻副鼻腔乳頭腫の自動診断」の研究成果を発表しました。

「人工知能を用いたCTにおける真珠腫乳突腔進展の自動診断」について

中耳真珠腫の進展範囲は、CT所見のみでは炎症所見と真珠腫の判別が困難であるため、日本ではMRI所見と合わせて判別することが多いのですが、日本以外ではMRIを設置している施設が多くないこと、乳突腔進展有無によって経外耳道的内視鏡化耳科手術の適応を判断することが多いことからCTのみで乳突腔進展有無を判断する意義は大きいと考え、水平断CTでAIがどの程度乳突腔進展を判別できるか研究しました。

本研究では、東京慈恵会医科大学附属病院にて手術施行した弛緩部型真珠腫新鮮例164耳を対象とし、水平断CT上半規管レベルから30スライスを抽出した画像を用い、AIの精度と耳鼻科医が同じ症例を読影した際の精度と比較する実験も行いました。

本研究で開発したAIは、少ない症例数のCT画像のみでも、AUC 0.843、精度0.837、偽陽性率0.227、偽陰性率0.150の精度で予測できることがわかりました。今後、症例数を増やすことにより、精度の向上および臨床への導入が期待されます。




「人工知能を用いた鼻内視鏡動画における鼻副鼻腔乳頭腫の自動診断」について

鼻副鼻腔乳頭腫は良性腫瘍ですが再発や悪性転化しやすく、早期に診断して外科的切除を施行することが望ましいです。特徴的な鼻内所見から推定できる症例がある一方、診断が遅れる症例も散見されます。今回、人工知能を用いた鼻内視鏡動画における鼻副鼻腔乳頭腫の自動診断を研究しました。

本研究では、東京慈恵会医科大学附属病院において内視鏡下手術を施行した53例(鼻副鼻腔乳頭腫21例、好酸球性副鼻腔炎32例)の手術動画を用い、AIの精度と耳鼻咽喉科医が同じ内視鏡動画から診断した際の精度と比較する実験も行いました。

本研究で開発したAIは、少ない症例数でも、AUC 0.874、精度0.843、偽陽性率0.124、偽陰性率0.191の精度で予測できることがわかりました。今後は、学習に使用する症例数を増やすことにより、精度の向上および臨床への導入が期待されます。




■特設ページ:第123回 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 学術講演会
http://www.congre.co.jp/jibika123/index.html

■発表資料:「人工知能を用いたCTにおける真珠腫乳突腔進展の自動診断」(pdf)

■発表資料:「人工知能を用いた鼻内視鏡動画における鼻副鼻腔乳頭腫の自動診断」(pdf)