イノベーションを支えるオープンソース技術 ~OSS推進フォーラム2017開催報告

【イベントレポート】顔に現れた感情の認識、データセンターにおける最適な温度管理、自動運転システム――。最先端の技術領域の裏側をさまざまなオープンソース技術が支えていることをご存知でしょうか? 2017年2月15日、サイオス本社で開催された日本OSS推進フォーラム主催のセミナーでは、OSSの最新動向や技術がこの1年間の活動成果とともに報告されました。その中で、日本OSS推進フォーラムの理事およびクラウド技術部会の副部会長を務める黒坂肇と、アプリケーション部会のメンバーである手塚拓が、それぞれの部会における発表をおこないました。

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日本OSS推進フォーラムでは、クラウド技術部会、ビッグデータ部会、アプリケーション部会という3つの部会が活動しています。本セミナーでは、それぞれの部会における2016年度の成果と今後の展望が報告されました。

クラウド技術部会 ~「OSS鳥瞰図2017α版」を発表

クラウド技術部会(チーム1)では、OSSを活用する際の参考資料となる「OSS鳥瞰図2017α版」を公開したことを報告しました(関連記事:IT Leaders「OSS(オープンソース・ソフトウェア)鳥瞰図2017年版【第1回】)。

OSS鳥瞰図2017α版は、代表的なOSSを「デスクトップ、業務アプリケーション」「Web/APサーバー、データベース」「運用管理」「Webサイト構築」「BigData(ビッグデータ)」「OS、仮想化、クラウド」「検索、分散処理」「開発支援」「セキュリティ」「ファイルサーバー、メールサーバー」という10個のカテゴリーに分類・整理しています。

OSS鳥瞰図の初版は2012年5月に公開されましたが、今回の改訂でビッグデータが新たなカテゴリーとして追加されました。また、クラウド関連のOSSがXaaS別に整理されているのが特徴です。

鳥瞰図からはOSSがビジネスの様々なシーンで利用されていることが読み取れます。

たとえば、OpenStackなどクラウド関連のOSSは、2016年頃からエンタープライズ領域で本格的な導入事例が増加。クラウド技術部会(チーム2)では、いち早くクラウドを導入した先行ユーザーの知見やアドバイスを整理、共有することでユーザー側の導入・運用時の悩みや不安を和らげ活用を促す取り組みを始めています。

ビッグデータ部会 ~機械学習/ディープラーニング関連のOSSに注目

ビッグデータ/IoT/AI分野に関連するOSSも複数注目されています。具体的にどのようなOSSに関心が集まっているのでしょうか?

ビッグデータ部会では2016年、さまざまなデータを収集、蓄積、分析するOSSを対象に調査を実施しました。開発の活性度、ビジネスの活性度、技術者の注目度、技術情報の充実度の4つの観点に基づく総合評価では、MongoDB、Redis、TensorFlow、Elasticsearch、Apache Sparkが上位に並びました。

特に、開発の活性度や技術情報の充実度の観点で、開発元のGoogleがOSSとして公開する機械学習/ディープラーニング/多層ニューラルネットワークライブラリTensorFlowの躍進が目立ちました。

本セミナーではこのほかにも、オープソースのグラフDBであるneo4jを取り上げました。ノードとエッジが静的に結合するデータモデルが用いられているため、JOINで動的にテーブルデータを結合するRDBに比べて高速なネットワーク検索を行う仕組みや、がん診断の精度向上にneo4jを用いる医療分野の実例が紹介されました。

サイオス本社で去る1月に開催したneo4j の初級ハンズオン(有償)もおかげさまで満席、好評でした。「もっと学びたい」という要望が多いことから、中級編も含めて近々の再開催を計画中です。ご期待ください!

ビッグデータ部会では今後、OSSを基盤とするビッグデータ活用がビジネスにもたらす効果や構築に必要なコンポーネントなどを検証し、その結果をオープンにすることを検討しています。

アプリケーション部会 ~Rubyの適用事例をIoT/AI分野に

アプリケーション部会では、Rubyおよび組み込み向けRubyであるmrubyの適用範囲の拡大を継続して研究調査しています。開発中のシステムの成果などと併せて説明がおこなわれました。

Rubyを用いた開発中のシステムが、顔認識技術を用いて施錠されたドアを自動開閉するシステムです。カメラで撮影した物体のデータをRubyプログラムが実装されたRaspberry Piおよびゲートウェイを介してクラウド上に転送、蓄積。集めたデータをOSSのディープラーニングフレームワークを用いて解析しました。システムの随所にOSSが用いられていますが、今後は外部コマンドをRubyで置き換えるなど改良を進め、IoT/AI分野での適用例を増やしたいとのことです。

また、mrubyを利用したシステムとして、Raspberry PiとGPSセンサー、温度センサー、クラウドサービスなどを連携した位置情報発信アプリが紹介。ライブラリ(mrubygem)やメモリー消費に関するナレッジを来場者と共有しました。

会場の一角には、mrubyを適用した温度測定機能付きGPSロガー(左)などが展示。GPSロガーはランナーが携行することで位置情報をブラウザ上に可視化できる。今後はさらなる実測精度の向上とハードウェアの小型化を目指す

アプリケーション部会では、ディープラーニングにRubyを適用することの有効性や課題も検証しています。RubyBrainとPython製のフレームワークであるKerasを用いて同じ処理を行わせ、導入しやすさ、ドキュメントの多寡、予測精度、計算処理の速度、ライブラリの充実度、複雑度、過学習などについて、得られた知見を紹介しました。Rubyにおいても、SciRubyなどのライブラリの拡充といったコミュニティの活動が活発化しているそうです。

基調講演 ~ Googleの社内事例や自動運転システムへの応用

この日は2つの基調講演がおこなわれました。

Google Cloud Platform, Cloud Solution Architectの中井悦司氏は、TensorFlowなどGoogleの技術、サービスを用いながら、一般的な機械学習、ディープラーニング、AIの関係を考察しました。

中井氏は、「AIの定義は多岐にわたるものの、人間の脳の神経細胞モデルをコンピュータでシミュレーションする技術(ニューラルネットワーク)と、推論エンジンで推論処理を行うものが注目されている。機械学習はそうしたAIの一分野。その本来の役割は未来を予測することではないか」と見解を示しました。

講演では、Googleのサービスとして提供される、人間の発声に近い音声をニューラルネットで自動生成するWaveNetの事例をはじめ、画像を識別するGoogle Vision APIとTensorFlowを「きゅうりの等級判別」に用いたユーザー事例などに触れました。なお、Googleでは、データセンターの冷却設備の動作をディープラーニングを利用して解析し、最適な冷却設備の動作を行わせることで冷却コストを40%削減したそうです。

もう1つの基調講演で登壇したのは、大阪大学大学院 基礎工学研究科 助教 安積卓也氏。一般道自動運転向けオープンソースソフトウェアであるAutowareを紹介しながら研究成果を報告しました。

自動運転のレベルは5つありますが、安積氏が研究しているのはレベル3(危険回避など一部を除く運転を自動で行うレベル)以上です。ただ一般道は、専用道に比べて走行レーンが複雑で対向車もあるなど制御が難しくなります。

安積氏は、(1)自動運転車両の自己位置推定、(2)先行する車や対向車、道路標識、信号などの物標認識、(3)スタート地点とゴール地点を結ぶ経路計画、(4)ハンドルやアクセル、ブレーキに伝えられる軌道生成という4つの主な機能を支えるうえでOSSが重要な役割を演じていると言います。特に、自己位置推定や信号機の色認識などの計算に用いるアルゴリズムに機械学習およびディープラーニング関連の技術が用いられているとのこと。

本セミナーの最後には、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐の中智晴氏も登壇しました。経産省が力点を置くビッグデータ/AI/IoT分野および、IT人材育成に向けた施策について説明しました。

この日は、過去最多となるフォーラム会員企業の皆様が参加。会場は満席になり、来場者の方同士が交流を深める様子もあちこちで見受けられました。

本セミナーで公開された資料の一部は日本OSS推進フォーラムの公式ページに公開されています。

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