金融機関に眠るデータを収益源に変える新技術
〜データから価値を生みだす "FinTech" 〜

【社内インタビュー】 地域金融機関が提供する個人向け無担保ローンのデフォルトリスクを抑えつつ顧客の資金需要に柔軟に応えるために、Profit Cube Inc.(以下、PCI)が新たに開発した次世代ローン審査システム「QUANTUM(クォンタム)」。金融機関に眠る貴重なデータ資産を収益機会の拡大に結び付けるシステムとして今年4月12日にプレスリリース発表し、デビューしました。鍵になる「信用力」を精緻かつ迅速に判定するための画期的な仕組みとは。「地域経済を支えるためにお役に立ちたい」 と語る、PCI執行役員 信用情報システム事業部長 盛隆幸に詳しく聞きました。

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低金利下で金融機関が注目する個人向けの無担保ローン

― フリーローン、カードローンなどの個人向け無担保ローンが地域金融機関における重要な収益源として注目されているそうですね。その背景からまずは教えてください。

2つの要因が挙げられます。1つめは、個人向け融資において主力商品である住宅ローン市場の競争が熾烈になっていること。2つめは、無担保ローンがマイナス金利下のマーケットにおいても比較的高い利ざやが期待される金融商品であること、です。

個人向け無担保ローンは、ローンの契約者が返済できなくなった場合、保証会社がその残債を金融機関に保証する形態が一般的です。契約者が返済できなくなることをデフォルトと呼びますが、もしデフォルトリスクをより精緻に予測できれば、金融機関は保証に頼らず自身の判断で融資を行えるようになります。今まで融資を見送らざるを得なかったケースに対応し、多様な資金ニーズにお応えすることができますし、保証料を抑えることができますので、銀行にとっても新たな収益を生み出す貴重な機会が創出できると考えられます。これを円滑に進めるには、個人の信用力の判定を精緻かつ迅速に行える業務上の体制、仕組みが必要になります。

― これまで個人の信用力判定は金融機関においてどのようになされていたのでしょうか。また、そこでどんな課題があったのでしょうか。

まず、個人の信用力を判定する統計学的なモデルにおいては、過去に行われてきた多数のローン申込取引実績から抽出された一般的な属性(年収、業種、勤務先などの情報)から総合的なモデルを構築する、という手法がこれまで多く採用されてきました。加えて、個人信用情報機関から取得した申込者本人に関する外部の個人信用情報(外信情報)に頼っているのが実情です。こうした従来の仕組みにおいては金融機関が保有する個人の取引情報を活用していないため、信用力判定には限界があり、融資を見送らざるを得ないケースが生じていました。これは金融機関にとっても大きな機会損失を意味します。
取引状況によって金融機関が保有する個人の情報量は異なりますが、こうした情報を活用できれば、これまで見送ってきた融資でも実行できる可能性が高まりますので、申込者にとっては融資機会の拡大、金融機関にとってはマーケットの拡大につながります。ただそれには、金融機関自身がこれまでの取引から蓄えてきた情報の質、量に応じて、信用力の判定モデルを複数パターン用意し、より精緻な信用力の判定を行うこと、またそれらの仕組みを実装するシステムが必要でした。

個人の信用力を精緻に判定する次世代ローン審査システム「QUANTUM」

― 個人の無担保ローンには新規申込や借り換えなどの多様なニーズがありますが、それに対して金融機関が機会を逸することなく柔軟に対応できるのですね。ただ、そのような高度なサービスを実現するシステムの開発にはかなり難しい技術が要求されたのではないでしょうか。

当社は、長年にわたり、個人信用情報照会パッケージソフトの製造・販売してきました。その中で、外信情報のデータ取扱いにおけるノウハウ、および関連する技術を磨いてきましたが、これに加えて、地域金融機関の融資業務における実務を教えていただくことが不可欠でした。また、預金実績、ローン実績などの蓄積された顧客情報を分析し、デフォルトする個人の特徴を的確に見つけ出すためのイノベーションが必要でした。

今回、QUANTUMの核となるロジックを開発するにあたってカギになったのは、信用力の計量化です。企業の信用リスクおよび金融資産・企業価値評価に関するノウハウと、個人向け有担保ローンで独自に培った技術を無担保ローンの領域に適用したのです。この分野において豊富な知見と実績を有するクレジット・プライシング・コーポレーション(CPC)が信用判定モデルの作成を担当し、これにPCIが得意とするシステムの自動化技術を組み合わせることで、金融機関でこれまで眠らせていたデータ資産を収益力に転化させる機能を実装することができました。この機能については非常に画期的であることから特許を出願しているところです。

QUANTUMは、今スタートラインに立ったばかりです。これからも地域金融機関にて実績を積み上げ、地域経済を支えるためにお役に立てるよう、努力していくことが大切だと思っています。

― QUANTUMは、具体的にどのようなシステムでしょうか。

QUANTUMは、金融機関が保有する申込者の情報量、条件に応じて、自動的に最適な信用力判定モデルを選択し、審査を進めることを可能にするツールです。申込入力に続くデータの取り込みや判定といった一連の操作は自動化されていますから、現場にかかる事務負担を抑えて運用できるのが大きな特長のひとつです。

また、当社が提供する個人信用情報照会パッケージソフトであるe-Acrisと連携して外信情報を自動取得することにより、複数の種類のローン申込を一度の手続きで同時に審査することができます。返済途中の実績に応じて申込者の与信枠を調整する、といった機動的な審査業務(途上与信)にも対応させることが可能です。

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PCIが発表した金融機関向け次世代ローン審査システム「QUANTUM」

データ活用によって地域経済の活性化に貢献

― 最後に今後の展望をお聞かせください。QUANTUMを契機にして、地域金融機関が自ら主体的にデータを活用する動きが出てきそうですね。

その可能性は大いにあるものと考えています。個人の信用力判定モデルは、顧客との取引実績データが増えていくほど、モデルを適切にチューニングするほど、さらに精緻化することができます。

加えて、蓄えたデータは市場開拓やマーケティングにも大きな価値を生み出すと考えます。たとえば、ダイレクトメールを使って、どの顧客にどのようなタイミングでローン商品を提案すれば最も効果的なのか。またATMの画面などの様々な顧客接点におけるレコメンデーション施策の仮説検証においても応用できる余地があります。この分野における人工知能の活用は、別のチームが研究に取り組んでいます。

地域金融機関においては、リスク管理などの「守り」と収益性を高める「攻め」を両輪とする"FinTech"への取り組みが今後、欠くことできない経営戦略だと当社は考えます。それがひいては地域経済の活力を高めていくことにもなるでしょう。私たちPCI はサイオスグループの有する先端技術を組み合わせることで新製品を市場に投入し、地域経済を支えるミッションを今後とも着実に果たしたいと考えています。


盛隆幸(Takayuki Mori)
PCI
執行役員 信用情報システム事業部長

開発部門ヘッドとしてALMシステムの大規模開発を指揮し、現在は信用情報システム事業部を率いる。学生時代はバスケットに熱中、近年は息子のサッカーを熱烈応援。冬でも汗かきの熱血漢で、周りの熱気が2度上がる。

記事の関連情報
プレスリリース(2016年4月12日)についての情報はこちら
クレジット・プライシング・コーポレーションについての情報はこちら

クレジット・プライシング・コーポレーション(CPC)は、信用リスクおよび金融資産・企業価値評価に関わるプライシング技術のプロフェッショナルです。 豊富な経験と最先端の金融工学技術に基づき、常に実務的な見地から、企業の将来計画作成、信用リスク管理、内部格付制度、債権投資、プライベートエクイティ、M&A、企業再生、シンジケートローン、住宅ローン、ノンリコースローン、不動産投資等の業務支援とプライシング能力の向上を強力にサポートしています。

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