北東アジアで拡がるOSS市場

【イベントレポート】 第14回 北東アジアOSS推進フォーラムが2015年11月16〜18日の3日間、東京都内の会場で開催されました。2日目、フォーラム本大会の基調講演では、日中韓3カ国の議長が登壇し、各国におけるOSS普及促進に向けた活動成果や、今後の国際協力の進展について講演を行いました。

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2003年から続く3カ国の連携

北東アジアOSS推進フォーラムおよび日中韓におけるOSS推進フォーラムが発足したのは、12年前の2003年11月のこと。日中韓3カ国の経産・総務大臣会議に続く「日中韓オープンソースビジネス懇談会」まで遡ります。第1回の北東アジア推進フォーラム本大会は翌2004年1月、北京で開催されました。

これ以来、北東アジアおけるOSSの普及・発展を目指し、4つのWG(ワーキンググループ)が「技術開発・評価」「人材育成」「標準化・認証研究」「適用推進」に向けた活動を協力して進めてきました。

その成果が披露された14回目となる2015年のフォーラム本大会は日本での開催となりました。日本OSS推進フォーラム会員のサイオスも本大会の運営をサポートしました。

本大会の基調講演では、日中韓各OSS推進フォーラムの議長が、OSSの動向に関する見解と各国における取り組みを総括しました。

第四次産業革命のカギを握る「知の集約」と「オープンイノベーション」

はじめに、開催国議長である日本OSS推進フォーラム理事長の吉田正敏氏は、産業界における近年のパラダイムシフトに、OSSが牽引するオープンイノベーションが大きな役割を果たしていると指摘しました。

日本OSS推進フォーラム 理事長の吉田正敏氏

「18世紀の蒸気機関、19世紀の電力、20世紀のITに続く、21世紀の工業技術の成果として、2020年代に500億個のデバイスがネットワークに接続することが予想されるIoTや、最先端のAI技術が挙げられます。高性能なハードウェアや高速な通信ネットワークの急速なコモディティー化が進んだ結果、それらを動かすソフトウェアの可能性や活用の重要性があらためて注目されています」と吉田氏。所属する富士通でも、産業用ロボットの動作を製品設計データをもとにコンピューターでシミュレーションし、動作プログラムを自動生成するシステムの開発に注力しています。「部門横断的な本開発プロジェクトは、OSSにおける知の集約という考え方と共通します」(吉田氏)

「物理的世界をセンシングし、サイバー空間で膨大なデータを高度に処理するサイバーフィジカルシステム(CPS)の実現にはさらなる技術の標準化やOSSエコシステムの整備が必要になるでしょう。第四次産業革命の鍵を握るのは、オープンイノベーションです。電気自動車や自動運転技術の開発を促す自動車業界へのICT企業の参入、といった従来の垣根を超える動きもその一つの兆しと言えます」(吉田氏)。

また吉田氏は、2015年3月に日本OSS推進フォーラムが主催したOSSシンポジウム2015の基調講演に招いたLinux Foudation マネージメントチーム エグゼクティブ ディレクター Jim Zemmlin氏のメッセージを振り返り、OSSやクラウドサービスに対する産業界からの注目度が世界的に高まっている点に言及、各国OSS推進フォーラムのさらなる活動を期待しました。

OSSコミュニティへの貢献者数の伸びが著しい中国

次に、中国OSS推進連盟 副主席のLiu Peng氏が中国におけるOSSの普及状況および同連盟の活動について報告しました。

中国OSS推進連盟 副主席のLiu Peng氏

「産業分野におけるOSSの活用が目立っており、金融、電力、郵政、教育分野におけるサーバー利用ではLinuxがシェアを拡大しています。またアプリケーション利用においても、Huawei、Alibaba、Baidu、Tencent、Sina、China Mobileなどの企業がOSSを戦略的に導入しています」(Liu氏)。コミュニティへの貢献も伸びており、「Linux Kernel ver4.2では多くの中国人開発者が貢献し、提出パッチ数は世界最多でした。世界スパコン性能ランキングTOP500で5年連続1位を走るTianhe-2(天河2号)は、Linuxベースで開発されています」(Liu氏)

北東アジアOSS推進フォーラムにおける3カ国連携の活動では、WG1(技術開発・評価)で進められる日中韓で展開するインタークラウドテストベッドを拡張し、クラウドベースのアプリケーションをテスト・実践するOpenStackを用いたインタークラウドプラットフォームの構築プロジェクトや、WG3(標準化・認証研究)におけるソフトウェアパッケージデータ交換(SPDX)標準の研究強化、WG4(適用推進)における洛陽市を舞台とするスマート観光システムでのOSS適用や、大規模データセンターの開発コンサルティングでの国際協力を2015年の成果として紹介しました。

「ただ、企業におけるOSSの認知度のさらなる向上や政府の支援、コミュニティへの貢献やOSSに通じた技術人材の育成を一段と進める必要があります。これらの課題解決に向けて、産業界や地域コミュニティの支援、IT産業と伝統産業におけるOSSを活用したクロスボーダーな取り組み、また日本、韓国との情報交換や協業を強化したい」とLiu氏は展望を述べました。

韓国では通信、放送、流通、エンターテインメント企業などがOSSを活用

続いて、韓国OSS推進フォーラム議長のKo Hyunjin氏が登壇。韓国でも日本や中国と同様にOSS市場が伸びていると言います。

韓国OSS推進フォーラム議長のKo Hyunjin氏

「Linux、Apache、PHP、MySQLといったサーバーベースのOSSから、IoT、クラウド、ビッグデータ、モバイルなどに用いられるOpenStack、Hadoop、Androidなど最終ユーザーの接点領域に寄与するOSSへ比重を移しつつも、市場規模は堅調に拡大しています。2014年の国内OSS市場規模は594億ウォンですが、2019年に1230億ウォンに達する見込みです」と、Ko氏。北東アジアOSS推進フォーラムにおける3カ国の連携がさらに進めば予想を上回る成長が期待できるだろうと述べました。

「韓国政府も来るソフトウェア中心の社会を見据え、小学校からソフトウェアの学習機会を提供するなど人材育成に注力しています。オンラインでソフトウェア学習を行える『entry』というサービスの基盤はOSSで構築され、検索サイト大手のNAVERも運営を支援しています」(Ko氏)

Ko氏はほかにも、有線ネットワーク事業を手がける通信事業者KTが構築したZabbixベースのモニタリングシステム、海外100カ国の支社にコンテンツを輸出する放送局KBSが運用するOpenStackをインフラ管理基盤とするクラウドシステム、「少女時代」などK-POPグループを擁するSM entertainmentが構築したAndroid/iOSなどモバイルと連携するクラウドベースの視聴サービス、ソーシャルコマースを展開するWemapがOSSベースで構築したコンシューマー向けの高速な電子商取引システム、そして消費者ニーズに即応するシステムをOSSでアジャイル開発してソフトウェアのライセンス費用を削減した食品宅配サービスのKurlyの事例を紹介しました。

「優れた事例や知見を通じて3カ国のOSS普及における協力を進めましょう」とKo氏は一層の連携を求めました。

OSSコミュニティメンバーとしてオープンな世界を目指す

基調講演に続いて、北東アジア推進フォーラムの4つのWGの活動報告のほか、OSS貢献者賞受賞者による講演、各国企業や研究機関におけるOSS活用事例が紹介されました(詳細はこちら)。

来年の第15回北東アジアOSS推進フォーラムは、韓国での開催が予定されています。

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